2021年4月に書いた「和歌山のメバル事情(私見)」という記事がきっかけとなり、驚くべきことが起こりました。私のこの記事を読んだ大学の先生らの研究により、いわゆる我々釣り人のいうところの「南紀メバル」について言及した世界初の論文がアクセプトされたのです。今回はその過程について私の知る限りのことを「私目線」からつづります。長くなりますので、お暇な時に前回の記事とともに読んでいただければ幸いです(前回の記事はコチラ)。
和歌山ではアカ、シロ、クロの3種に加え、いわゆる南紀メバルという紀伊半島東南部に生息する独特のメバルが釣れることは、地元和歌山はもちろん、名古屋方面、大阪方面のアングラーには昔から知られていたことでした。それについての分布図であったり、特徴であったりを述べた私見でしたが、2021年11月14日、突然、私のメッセンジャーに一通の連絡が届きました。私の記事を読んだという広島大学で魚類の生態研究をしている助教の河合先生からのものでした。
ざっくりいうと、河合先生は日本全国でメバルの調査をしており、和歌山はアカ、シロ、クロの三種に加え「南紀メバル」が釣れるというレアな環境であり、サンプルを集めたいので、一度和歌山に来て話を聞きたいとのことでした。なるほど。和歌山の海は紀北エリアと紀南エリアではもう全く別の海であり、確かにこれはぜひ知っていただきたいとの思いもありました。
河合先生が言うには、とにかくエビデンスをちゃんと確立させたものにするには各種類30匹以上必要とのことで、今回のミッションは「和歌山でアカ、シロ、クロ、そして南紀メバル、すべて30匹以上捕獲せよ!」というまぁまぁハードなものでした(笑)。
ここで少し話が脱線します。実は私、「南紀メバル」という俗称について大いに違和感を持っていました。というのは、和歌山県民としては、南紀=田辺~那智勝浦間のイメージがすごく強く、特に白浜やすさみ町あたりが「南紀」が濃い(なんやねんそれ)という感覚です。ちなみに新宮エリアは紀南と呼ぶのが一般的な気がします。
なので、南紀メバル黎明期、その存在を知った時、そりゃもう当たり前のように田辺や白浜、すさみあたりをランガンしました。しかし幾度通ってもメバルの姿を全く見ることができず、もしかしてUMAのたぐい? とまで思いました(これについては前の記事の分布図を見ていただければと思います)。
2、3年はそんな状態が続いたでしょうか? そしてようやく潮岬にある出雲漁港の常夜灯の下でメバルらしき魚影を見たのが初めてのことでした。ここでは苦節を省きますが、そこから数年かけてようやく「南紀メバル」は、串本の東側から新宮市の間(熊野灘)に生息することが分かり、釣ることができたのです。
私はこの時思いました。「これ…南紀メバルではなくて熊野メバルやん! 名付け親出てこい! ワイの数年間を返せ(笑)」と。
すみません、取り乱しまして……話を戻します。
河合先生は2021年の12月初旬、さっそく学生さんを連れて和歌山に来てくれました。まだ若い先生なのでどっちが学生さんかと思いましたが、とてもいい人で、まずはつなことともに初対面のごあいさつを済ませ、夕食後、新宮方面で「熊野型メバル」(以後、私の記事では南紀メバルを熊野型メバルと呼びます)を狙いました。
結果からいうと第1回熊野型メバルチャレンジは全員ノーバイトで終了。そうなのです。熊野型メバル、2017年の黒潮大蛇行の発生あたりから急激に釣りにくい魚となっており、「釣れるかどうかは分からない」と断ったうえでの調査だったのです。「せめて4~5年前に言ってくれれば…」とは思いました。ちなみに黒潮大蛇行は2023年11月現在も絶賛継続中です。
「このままではマズい…。30匹釣る前に自分の寿命が尽きてしまうわ」と思ったジジイの私は、こういうアカデミック系であり、超凄腕のアングラーといえば……と真っ先に思い浮かべたのが友人の土井さんでした。
土井さんの経歴は個人情報に当たるので割愛しますが、雑に言えば「超カシコのくせに行動力がバグってるアングラー」です。さっそくサンプリングのお手伝いをしてほしいと連絡したところ、二つ返事でOKとのこと。さすが土井さん!
そして年が明けて2022年1月、河合先生2回目の「熊野型メバル」アタック。この時には土井さんも参加してくれました。
まず前回と同様に現地で晩飯を食べながら今回のミッションについて河合先生から説明があり、いざ二手に分かれて現場に! 私が最初に向かったポイントでは相変わらずアタリすらなく、今回もダメかなぁとモチベーションが保てずにいましたが、スマホに土井さんがキャッチしたという連絡が来ました!
土井さんの元に向かうと、同行の学生さん、そして先生がおり、生で見る熊野型メバルを興味深そうに観察されておりました。熊野型メバルにしては若干小さめでしたが、それでも威風堂々とした姿はやはりかっこいいものでした。
残念ながら河合先生、そして学生さん、もちろん私ら2人も、2回目のチャレンジをもってしてもメバルのお顔を拝むことはできませんでしたが、さすが、最強助っ人土井さんが無事に1匹キャッチしてくれたので、無事に熊野型メバル調査ミッションのスタートが切れました。
土井さんは言いました。「釣れてよかった。でも、せめて4~5年前に言っていただければ、これだけ人数がいれば一晩でそろえられたのに」と。うん、それ、私も思った(笑)。
1年目の河合先生の熊野型メバルアタックはひとまず終了。その後、私としては単独で数回熊野型メバルアタックに行ったものの、全くの無反応。これ無理ゲーですわマジで。
心がズタボロになった私、とりあえず熊野型メバルはいったん置いておいて、シロ、アカ、クロ30匹の確保を目指すことにしました。
和歌山のメバル事情2023 後編に続く。→ 後編
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