ちょっとしたこぼれ話。
今から約50年前の1957年2月10日の夜、
大荒れの日ノ御碕沖でおぼれる日本人を助けようと、
海に飛び込んでその命を落とした外国人がいます。
デンマーク人の機関長・ヨハネスクヌッセンさん。
翌11日早朝、日高町田杭海岸で水死体となって発見され、
その遺徳は今も語り継がれています。
数年前にこのクヌッセンの偉業を取材し、
書籍にまとめた方と話す機会があり、
その方によるとクヌッセンの遺体は
スズキ(ヒラスズキと思われる)を釣りに行った漁師が発見したといいます。
書籍の著者は
「外海が荒れると、スズキは湾内に入ってくるので、それを狙いに行ったんじゃないかな」
と言っていましたが、そうじゃありません。
スズキは海が荒れれば釣れる魚。
田杭の人は大荒れの磯でスズキが釣れることを、
少なくともこの時代から知っていたのです。
ある有名なルアーマンが釣り雑誌に「ヒラスズキ開拓史」のようなエッセイを綴り
「サラシの中で釣れることを発見した」と書いていましたが、
少なくとも日の岬のふもとの漁村では、
ずっと以前からヒラスズキは荒れると釣れるという事実が知られていました。
ちなみにこの地方ではヒラスズキのことは「モス」といい、
年配の漁師に聞くと
昔はドジョウをエサにしてサラシの中で
8の字を書いてでっかいモスを釣ったといいます。
もちろん延べ竿ですが、よく釣れたのでしょう。
スズキバエという磯もあります。
毎年この時期になると英雄クヌッセンへの思いを馳せながら、釣りをします。
そのころの豊かな海には、どれだけデカいモスがいたんでしょう。