一魚一絵

 

和歌山県のへその当たる日高郡日高町。

 

釣りの名所としてはもちろん、

 

“クエのまち”として多くの観光客が町内の旅館を訪れますが、

 

実はクエを名物として売り出した歴史は、まだ浅いのです。

 

 

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同町阿尾地区には、江戸時代から続く県無形民俗文化財「クエ祭」があります。

 

このクエ祭を題材に、なんとか町を活性化できないかと考えた人がいました。

 

元町職員のYさんです。

 

昭和50年代、この町は原発の建設候補地として揺れていました。

 

当然、大手新聞の記者たちも連日取材に訪れていました。

 

役場の管理職に就いていたYさんは、

 

取材対応で親しくなった記者と大阪で食事をする機会を得ました。

 

その店で食べて感動したもの、

 

それは店の生けすから、すくったばかりの新鮮なイワシの料理でした。

 

「イワシなんて、と思ってましたが、一口食べて価値観が変わりました」とYさん。

 

美味さだけでなく、値段もなかなかのもの。

 

魚どころの和歌山としても負けてられません。

 

なんとか新鮮な魚を使ったまちおこしはできないかと考えました。

 

そしてひらめいたのが、クエ祭の“主役”クエでした。

 

クエ祭は阿尾の白鬚(しらひげ)神社の秋季例祭。

 

クエの身と内臓を取り出して形を整えて干し、クエ神輿にします。

 

その神輿を担いだ若衆と神社側の当屋衆がクエを奪い合うまさに奇祭です。

 

※勇壮かつ豪快な「クエ押し」と呼ばれる行事でしたが、ことし(10月13日)からはこの「クエ押し」がなくなりました。少子高齢化が主な原因らしいですが、寂しい限りです。

 

日高町とクエは、このように切っても切れない関係。

 

元々、地元の釣り人や漁師の間では

 

「クエを食べたら他の魚は食えん」と言われるほど美味でしたが、

 

一般にクエの魅力を広めた功労者がYさんなのです。

 

Yさんは自費で大阪などにおもむいてPR活動を展開。

 

グルメブームにも乗って同町のクエは県内外に広く知られるようになりました。

 

大手新聞にクエのことが掲載されると、役場や商工会議所の電話は鳴りっぱなし。

 

一時は町内の民宿などのクエ料理の売り上げは、年間4億円にも上りました。

 

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先日、そのYさんが営むペンションでクエ鍋をいただきました。

 

Yさんとは数年ぶりの再会。

 

クエの第一人者が腕によりを掛けて作ってくれる料理を味わい尽くす、

 

ぜいたく極まりない一夜となりました。

 

メーンのクエ鍋の他、地元の金山寺味噌でアクセントを加えたクエの天ぷら、

 

そしてフグならぬクエのヒレ酒。

 

さらに真鯛造りなど地元の海の幸、山の幸。

 

Yさんのモットーは「その日の野菜、その時の魚に細工はいらん」。

 

地元産の素材について知り尽くすYさんの料理はどれも絶品。

 

特にクエ鍋は、Yさんが自信を持って

 

「最初の一切れはポン酢も何も付けずにそのまま味わってください」

 

というように、脂がたっぷりと乗って濃厚な味わいなのに、

 

くどさがなくあっさりとしていました。

 

「んん、うまい!」と思わず声が出るほど。

 

そして料理の腕もさることながら、その人柄もあってか、

 

これまでにないほど、おいしいクエをいただくことができました。

 

Yさんの話の中で一番興味深かったのが、“九絵”という当て字の話。

 

一般的には

 

「縞模様が九通りの絵のように見える」

 

「体に泥が付いて九つの絵が描かれているように見える」

 

などと言われているようです。

 

しかしYさんは、沸々と煙を立てる鍋の傍らで、

 

クエの切り身を取り分けてくれながら笑顔でこう言いました。

 

「九は中国では一番縁起がいい最高の数字。クエも最高位の魚です」と。

 

なるほど、では「絵」はなにか?

 

「深いところにいる天然のクエは、網で捕ることはできない。一本釣りでしか捕れないのです。絵という漢字は糸へんに会うと書きますよね。つまり、一本釣りの糸でしか会うことができません。一本の糸でしか会えない最高の魚。それが九絵なんです」

 

なるほど。実に面白い。

 

この説はもちろんYさん独自のもの。

 

しかし、なかなか説得力があり、そして夢のある話だと感じました。

 

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他にも興味深い昔の町の話で、楽しい夜演出してくれたYさん。

 

結果的に日高町には原発は誘致されず、

 

代わりにクエという名物が生まれたのでした。

 

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人は縁(えにし)の糸でいろいろなこととつながっていきます。

 

仕事でも趣味でもそう。

 

時にそのつながりは、それに関わる人との情熱との出会いにもなります。

 

僕にしたら、Yさんとの出会いもそうであり、そして釣り友達の方々も。

 

かような乱筆拙文なブログがきっかけになり、親しくなってくれた方もいます。

 

ちなみに僕、何かの自己紹介で「好きな言葉」を記入する欄があれば

 

「一期一会」と書くことにしています。

 

ご存知の通り茶道に由来することわざで、

 

「この一瞬を大切にし、今できる最高のおもてなしをしよう」と言う意味。

 

その人とは二度とは会えないかもしれないという気持ちで、

 

人と接しなさいという教えです。

 

実際、仕事で一度きりの出会いなど、ごまんとあるわけです。

 

そして、魚。

 

釣り上げた魚は、ほとんどが一度きりの出会いとなります。

 

そしてわれわれアングラーはその魚と一本の糸で対峙します。

 

本命魚であれ、外道(ゲスト)であれ。

 

大きいのであれ、小さいのであれ。

 

その出会いとは、まさに一期一会ならぬ“一魚一絵”。

 

キープするのであればもちろん、

 

リリースするのであるとしても、

 

その魚との出会いは、それが最初で最後になる可能性が高いのです。

 

逃がす時はできるだけ素速く記録用の写真を撮る。

 

いただく時もその生命に感謝し、できるだけ丁寧に扱う。

 

一匹の魚との一本の糸での出会い。

 

17日をもって、ブログ「爆!釣り部2」開設から丸2年が経ちました。

 

これからも“一魚一絵”の精神で釣りを楽しみたいと思います。

 

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「一魚一絵」への20件のフィードバック

  1. ブログ開設2年おめでとうございます。

    一魚一絵

    素晴らしい言葉ですね。

    じゃ一年の節目で僕のメモリアルフィッシュも記録と記憶に残る貴重な出逢いですよね。

    このブログも僕の教科書です。

    これからも笑いあり、笑いあり、たまに感動ありの楽しいブログを長く続けていただきたいと思います。

    いつもお世話になりっぱなしですので持ち上げときます。

    九絵、よろしくお願いします((o(´∀`)o))ワクワク

    1. >コウイチさん コメントありがとうございます(*^_^*)

      ありがとうございます。Yさんの「絵」の説明を聞いて、いいなと思ったんですよね~。
      コウイチさんのメモリアルフィッシュは今でも鮮明に覚えてますよ~。
      教科書ww んなバカな(;´д`*)ハァハァ テクニック的なことは一切書いてない、てか書けません(;´д`*)ハァハァ

      持ち上げ、ありがとうございます(;´д`*)ハァハァ
      クエは自分で食ってね(´・_・`)

  2. ブログ継続ですか!

    2年ラストのメモリアルな記事が根来の鯉釣り。
    なんと光栄な(笑)

    これからもよろしくお願いいたします(*´∇`*)

    1. >青山さん コメントありがとうございます(*^_^*)

      そうですね、、サーバー契約切れ寸前に更新しましたww
      当初から2年でやめるつもりでしたが、コウイチさんとかいう、怖い人に相談したら、「続けろやゴラァ!」と脅されたので継続します(>_<) コイ釣りは、2年ラストをかざる素晴らしい出来事でしたやん(笑) こちらこそよろしくお願いします≡ヾ(´∀`)ノ

  3. 前にもコメントしましたが、

    マルニシの釣果情報に出てたチャッくんのブログから、ひろさんのブログにたどり着き(つなちゃんがオリャーってタコ鷲掴してる記事w)

    それから毎回欠かさず読ませてもらってて、折れたサーフスター を修理したって記事に始めてコメント入れたのを覚えています。

    たまにくだらんコメント入れますが、

    これからも宜しくお願いします!

    1. >たくさん いつもコメントありがとうございます( ´∀`)

      そうでしたね~。タコわしづかみの記事の時って、まだたくちゃんと知り合ってなかったんですねぇ。。感慨深い。。
      てか、サーフスター修理ってつい最近の気もしますし、、たくちゃんと知り合ったのはもっと前な気がしました。
      これからもよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ

  4. ブログ開設2年、おめでとうございます。
    僕とひろさんとの出会いは・・・って、挨拶程度させていただいただけですね。
    3年目は是非一緒にクエ釣りでも行きましょう~。。

    クエ、僕の釣りたい魚の一種ではあります。
    特にMオーバーのやつね。
    ま、無理かもしれませんがね・・・・・。。

    1. >かじやんさん コメントありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ

      出会い、そうでしたw 3年目こそは「かじやん邸」に乗せていただくことが目標です!
      クエ釣りですか(;´д`*)ハァハァ 夢がありますよね。。

      あんなもの釣れるんかなぁ。。もし釣ったら、みんな呼んでクエ鍋パーティー、、、
      いや、売ったらウン十万円に(;´д`*)ハァハァ

  5. ブログ開設2年おめでとうございます。

    いつも写真の撮り方や魚との付き合い方、文章力を学ばせてもらってます。

    コソッと読ませてもらって、ニヤッとfacebookにシェアもさせてもらってます(^ω^)

    1. >いかじさん コメントありがとうございます(*^_^*)

      ブログ2年もやってたんですね、としみじみ。えーと、写真やら文章やらお誉めいただき、ありがとうございます。
      そんな大したものではございませんが(汗)(汗)。
      コソ読み、ニヤシェア、ありがとうございます(´゚ω゚):;*.:;ブッ
      しかし、FBにシェアしてくれてたとは、まったく知りませんでした。

  6. 魚と暮らしが密着してる和歌山県。

    高級魚もあれば庶民の魚もありますね。

    一魚一絵、ええ言葉、魚を大切にしてる気持ちが伝わりほっこりします。

    1. >kurahokenさん いつもコメントありがとうございます(*^_^*)

      魚と暮らしが密着、たしかにそうですね! 釣り人じゃなくてもやけに魚に詳しい人とかいっぱいいますしw
      庶民(?)の魚といえば、アイゴとかイガミとかが大好きです(;´д`*)ハァハァ
      「一匹の魚に一本の糸で会う」という当て字になりますが、意味は一期一会と同じ。
      なんか、釣り人としていい言葉だなぁと思って(笑)。また久しぶりに釣りをご一緒させてください( ´ ▽ ` )ノ

  7. ブログ2年おめでとうございます。

    コウチィがクエクエいうてるのこのことやったんですねw

    そういえば、なぜかうちの近所に「クエ料理」と書いた居酒屋っぽい小料理屋さんが
    数年前にできました。

    興味はあるもののまだ行けてません・・・値段が恐いw

    クエ祭りなんていうのがあったんですね。
    今でも阿尾の辺りでは天然が釣れるんですか?

    1. >スマーフさん いつもコメントありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ

      そうそう。クエクエ言うてるのはこのことでした(´゚ω゚):;*.:;ブッ
      大阪の居酒屋さんでクエ料理ですか。たしかに値段がこわい(;´д`*)ハァハァ
      コウチイにおごらせましょう。魔法使いだから大丈夫です(^ー^)ノ
      クエ祭は、阿尾の白鬚神社の秋季例祭です。神様に供える48品のご馳走の中の一つにクエがあったのですが、
      いつしかクエが中心になったようで。
      んで、ことしから少子高齢化で「クエ押し」もなくなったようで。
      時代は移り変わりますね。
      日ノ御碕沖は天然クエの漁場としては北限にあたるとか。
      でも、そんなに釣れるものでもないみたいです。

  8.  ブログ開設2年おめでとうございます。そして、お疲れ様です。これからも楽しい記事をお願いします。(喜)
     高級魚!クエ! 夢の魚ですね~。何とかしてオフショアジギングで狙えんもんかと思ったりしますが、ハタ類の中でもお目にかかれない希少種ですね。(ちっちゃいのはたまに連れますが。。。)
     かれこれ、30年以上も釣りをやって来てますが、ルアーフィッシングをやり始めてから、魚との「一期一会」は実感しますね~。
     餌釣りよりもアグレッシブに魚を追いかけるからでしょうか。自分の思うところに居てくれた喜びはPRICE LESSです。
     ほんで、ルアーやってて直面するのがリリースですが、僕はデカイ魚ほど迅速にリリースすることを心がけてます。状態次第では写真をとることもせずリリースすることもあります。心のうちに焼き付けられればそれだけで十分おつりが来るくらいですから!!

    1. >Sさん いつもコメントありがとうございます(^ー^)ノ

      2年です。Nさんのブログを拝見させてもらい、そこからNさん、Sさん、Iさんとつながりました。
      釣果自慢うんぬんより、そういう人との縁をつないでくれるツールとして考えると、続けていくのはいいことだなぁと思いました( ´ ▽ ` )ノ

      クエは昔、ガシラ釣りでいっぱい釣れましたよ! 10cmくらい。一度でいいからでかいの釣りたいです。
      考えて結果が出た魚はほんまにプライスレス。こんなうれしいことはないですよね。

      リリース、なるほど。写真も撮らずに。心に焼き付けられればそれで十分!素晴らしいですね!
      ぼくも全部そうしたいところですが、そうなると写真なしブログになっちゃいますので、とりあえず必要な分は写真を撮ります(;´д`*)ハァハァ

  9. おめでとうございます!ブログ開設2年ですか~早いですね!(^-^)

    僕が「爆!釣り部2」に辿り着いたのは、確かDKさんのブログからだったかな~?
    しばらくしてからドカン!と山鱸の記事がアップされた時は「ひろさん、スゲェ!」って衝撃を受けましたもん!(゚o゚;
    写真も文章も思想も、僕にとっては、ひろさんのブログは鑑です☆

    「一期一会」「一魚一絵」の精神、素晴らしいですね。
    これからも「爆!釣り部2」楽しみにしていますよ!(^^)/

    1. >たけまんさん いつもコメントありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ

      2年です。あっという間ですね! 
      あの山鱸以来、90cmアップは釣ってないのでそろそろ釣りたいのですが、なかなか難しいです(;´д`*)ハァハァ
      写真とか文章とか、、いやいやまだまだ稚拙なもので、、ってか、僕からすればたけまんさんのブログから学ぶことが数多くあります。たけまんさんからは、アングラーだけでなくブロガーの先輩としてたくさんのことを学ばせていただいてます!

      これからも一魚一絵の精神で頑張ります( ´ ▽ ` )ノ  ありがとうございます。

  10. ブログ開設2年、おめでとうございます(^^)
    ひろさんの記事はいつも分かりやすくて感心させられます。
    九絵の話も深いですね(*´Д`*)
    ボクもひろさんみたいに書けたら良いのですが、到底無理なので自分なりに頑張ります(笑)

    また色々と参考にさせて下さい(^^)

    1. >なかさん いつもコメントありがとうございます( ´ ▽ ` )

      返事遅れてすみません。パソコン調子悪くてブログ放置してました(>_<)
      分かりやすいですか(^_^;)?? 乱文でだらだらと取り止めなくなっているので、
      僕からすると、なかさんのブログをめちゃくちゃ参考にさせてもらってるところもあるのですが(汗)。。
      九絵は、面白い話が聞けました。またみんなでクエ鍋パーティーやりたいですねぇ!
      コウイチさんのおごりか、自分で釣るしかないですが(´゚ω゚):;*.:;ブッ

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