川のチカラを信じたい

 

9月3日に和歌山県に豪雨をもたらした台風12号。

 

僕の故郷でも、当時の地元紙の報道によると死者4人、行方不明1人。

 

地元漁協も壊滅的な被害を受け、育成していたアユ、アマゴ30万匹も流出しました。

 

 

その後も数回のダムの放流があり、10月の後半になっても川の濁りは取れずにいました。

 

県の水産試験場に問い合わせてみると、

 

やはり死に絶えることはないにしろ、アユにとっては大打撃なのは間違いないようです。

 

たい積された泥の影響でアユの餌となる水苔が生えず、栄養不足に。

 

さらに栄養不足のアユだから卵の数も少なく、

 

産卵できても卵に泥が被さることにより、卵が窒息する可能性もあるとか。

 

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晩秋のこの季節。

 

いつもなら、昼間に橋の上から川をのぞき込むと落ちアユが帯のように浅瀬に集まり、

 

それをチヌが追うという光景が見られます。

 

それが・・・

 

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ことしは川の流れも大きく変わり、濁りも相まってか落ちアユの姿は確認できません。

 

わがふるさとの川はどうなってしまうのか心配でした。

 

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11月になり、ポイントをしぼり、3日連続でリバーシーバスに挑戦しました。

 

キーワードは

 

①橋の下の明暗部 ②流れ込み ③瀬落ちの深場 ④本流の流心――。

 

歩いてランガンできる範囲にこの全てを満たすところがあり、

 

重要度①~④の順番でポイントを攻めます。

 

まず初日ですが、先行者がいたこともあり、

 

④の流心のポイントだけを短時間攻めましたが、ノーバイト。生命反応もなく撃沈です。

 

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2日目。今度は気合を入れていきます。

 

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先行者もおらず、まずは明暗部を丹念に攻めたところ、

 

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2投目で30cm足らずのセイゴをゲット。

 

しかしその後は続かずにポイントを②の流れ込みに移します。

 

支流の流れ込みというわけではなく、

 

本流が数本に分かれて複雑に流れ、その流れ込みです。

 

落ちアユはこうした浅くなった瀬に集まる習性があるので、

 

流れ込みの落ち込みは、例え水深が50cmほどでも、シーバスの絶好の着き場となります。

 

河原を忍び足で歩き、この流れ込み周辺を丹念に攻めますが、

 

またもセイゴ1匹のみ。

 

③の瀬落ち、④の流心も攻めましたがノーバイトでした。

 

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帰りはポイント近くにある釣り友達が営む居酒屋に寄り「撃沈丼」をいただきました。

 

店内には先日釣ったヒラスズキの魚拓が飾られていました。

 

2011110221250000

 

ちなみにこの釣り友達の息子さんのしげちゃんは先日、

 

84cmのヒラスズキを、この川の明暗部のポイントで上げており、写真を見せてもらいました。

 

俄然やる気がでます。

 

話はそれますが、地元河川でのリバーヒラスズキというジャンル。

 

十数年このポイントでマルスズキを狙ってますが、

 

数年前まではヒラスズキなど見たことがありませんでした。

 

それが数年前からたまに釣れるようになりました。

 

原因は不明ですが、

 

ここ数年でヒラスズキの生息域が北上しているという僕の持論と関係があるのかもしれません。

 

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201111032133000

 

台風の影響で落ちアユパターンは成立しないのか――。

 

3日目。どうしても確かめたく、前日と同じ順序でポイントを撃ちます。

 

荒れ地となった河原を歩きポイントへと向かいます。

 

①明暗部ではアタリすらなく、②流れ込みも無反応。

 

③瀬落ちでのドリフトも通用せず、

 

向かったのは流心。

 

流心にいるシーバスは活性も高く、いれば食ってくる印象があります。

 

そしてポイントに移動して1投目。

 

フルキャストしてドリフトさせながらトゥイッチを入れると

 

いきなりガツンと引ったくられるようなアタリが。

 

この日も水面からは生命感は感じられず、

 

半分あきらめかけていたので、反応も一瞬遅れましたが、フッキングに成功。

 

流心部だけに川の流れも速く、一気に走られ、

 

目視できない遠くの暗がりでエラ洗いの音と、水面で暴れる感触がラインを伝わってきます。

 

音と手に伝わる感触だけでのやりとり。

 

目に見えない分、逆に感性が冴えた気がします。

 

慎重ながら大胆に寄せてきます。

 

流心からトロ場に浮かせ、

 

リーダーをつかんで河原にずり上げたのは

 

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餌が取れないためか、73cmの少しやせ形でした。

 

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でも、とてもきれいな魚体で、

 

何よりこの川にまだ落ちアユがいると信じさせてくれたのが本当にうれしかったです。

 

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毎年、アユの河川として多くの鮎師が訪れるこの川。

 

今年は台風で「落ちアユがいないアユの川」となりました。

 

年明け恒例、漁港の稚アユパターンのヒラスズキ、

 

春先恒例の河口の稚アユパターンの青物やシーバス。

 

これらもやはり望めないかもしれません。

 

僕はルアーマンですが、

 

鮎師の人たちは本当につらいと思います(もちろん漁協やおとり屋さんも)。

 

ただただ、自然の回復力、そしてふるさとの川のチカラを信じたいと思い、

 

ヒットしてくれたシーバスに感謝しながら帰路につきました。

「川のチカラを信じたい」への6件のフィードバック

  1. 仕事中なのにかなり入り込んで読んでしまいました。

    ひろさんの地元に対する愛情が凄い伝わってきました。

    狙い道理のシーバス、とりあえずはおめでとうございます!!

    ただ、やはり台風のダメージは予想以上に大きいのですね…

    元の川に回復するよう、僕も祈っております。

    1. >そぎやまさん

      子どものころからの遊び場というだけでなくて、僕に「釣りのイロハ」、そして、シーバスフィッシングの基礎をたたき込んでくれた川ですので^^愛着あります。

  2. 壊されまた再生する。この繰り返しが優しく厳しくもある自然の本来の姿なのかもしれませんね。
    いくら科学が進歩しても、結局われわれは自然の力には勝てないし、
    自然を無視して生きることもできない。
    だからこそ、命は尊く美しいものだと…

    写真の神々しい鱸を見て思います。やっぱり命は美しい!

    1. >スマさん おっしゃるとおりだと思います。ただ、今回の災害はダム底にたい積していた汚泥が原因かとも考えており、川が濁りっぱなしというのは人災ではないかと思います。ダムができてから川は明らかに痩せてしまってます。ダムがなければ汚泥も流されず、きれいな環境が続いていたのではと。。

  3. 3日間お疲れさまでした。
    一安心というには早いかもしれませんけど、新しくこれから生まれ変わっていく河川にとっての朗報だったことは間違いありませんよね!
    ダムがある以上、またこれだけの大規模洪水被害があったあとですから、昔に戻るのは難しいかもしれません。
    これを機に、行政をまきこんで、あるべき川の姿をもう一度考える機会になればいいですね。

    1. >青山さん

      ありがとうございます。最近はアユの遡上量も安定して多かった(それでも過去に比べると少なすぎ)ですが、回復には数年はかかるかもしれませんね。

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